セラミックの境界⑤私は患者さんによって補綴設計を変えています。
こんにちは、ワイズデンタルキュアです。
目次
第5話
同じセラミックを、全員に入れていいのでしょうか?
― 私が考える「補綴調合」という考え方 ―
ここまで、セラミックの境界に起こる変化についてお話ししてきました。
セラミックそのものだけではなく、
生活習慣、歯ぐき、歯そのものの変化、そして噛み合わせ。
いろいろな要素が、長い時間の中で影響し合っている可能性があります。
そして長年、治療後の患者さんを診ているうちに、私は一つのことを考えるようになりました。
同じセラミック治療だからといって、全員に同じ治療をしていいのでしょうか?
患者さんの条件は、一人ひとり違います
例えば、
喫煙される方と、されない方。
食いしばりや歯ぎしりが強い方と、そうでない方。
歯ぐきが下がりやすい方。
形成した歯の色が明るい方、濃い方。
年齢も違えば、これから起こる歯や歯ぐきの変化も違います。
さらに、
できるだけ天然歯らしい美しさを求める方もいれば、
長期的な色調の安定をより重視したい方もいます。
同じ「前歯をセラミックにしたい」というご希望でも、
その条件はまったく同じではありません。
それなら、補綴物も同じでなくていい
患者さんの条件が違うのであれば、
私たち歯科医師が考えるべきことも変わります。

同じセラミック治療でも、すべてを同じようには作りません。
形成面の状態やマージン、形態、材料などを組み合わせて考えます。これが私の考える「補綴調合」です。
例えば、
マージンをどこに設定するか
どのような形態にするか
どの材料を選択するか
どのような噛み合わせにするか
材料を一つ選べば終わり、ではありません。
いくつもの条件を組み合わせながら、
その患者さんに合った補綴物を作っていく必要があります。
私は最近、この考え方を
「補綴調合」
と呼んでいます。
「補綴調合」とは
薬を調合するとき、
一つの成分だけを見るわけではありません。
その人の状態を考えながら、必要なものを組み合わせます。
補綴治療も、それに少し似ているのではないかと思っています。
生活習慣。
歯肉の状態。
形成面の状態。
噛み合わせ。
年齢による将来的な変化。
求める審美性。
長期安定性。
それらを診た上で、
マージン × 形態 × 材料 × 咬合
を組み合わせていく。
これが、私の考える「補綴調合」です。
材料にも、それぞれ役割があります
例えば、e.maxなどの二ケイ酸リチウムセラミック。
形成面の色を生かしながら光を透過させることで、非常に天然歯らしい表現ができます。
私は、この透明感が作り出す自然さは大きな魅力だと思っています。
しかし、
中の色を生かせるということは、中の色の影響も受けるということです。
長期間ラミネートベニアなどの経過を診ていると、
セラミックそのものは綺麗な状態でも、内部の歯の色が経年的に変化し、以前より黄色く見えてくる症例に出会うことがあります。
そのような将来的な変化まで考えるのであれば、
形成面の色の影響を受けにくくするために、遮蔽性を持たせた設計を選択するという考え方もあります。
だから、
e.maxが良い、ジルコニアが良い、という話ではありません。
その患者さんの形成面の状態と、これから起こり得る変化を考えて選択する。
それも「補綴調合」の一つです。
喫煙される方なら、どうでしょうか
ここまで境界変色について考えてくると、
私は喫煙についても気になるようになりました。
喫煙による影響を考えるのであれば、
非喫煙者とまったく同じマージン位置、同じ補綴形態、同じ材料選択でよいのだろうか。
これは、まだ私の中でも考え続けているテーマです。
もちろん、
「喫煙者ならこの設計」
と単純に決められるものではありません。
しかし生活習慣までリスクの一つとして考え、それを治療設計に反映していくことは、これからの補綴治療に必要なのではないかと考えています。
治療直後ではなく、10年後を見る
セラミック治療では、治療直後の写真は綺麗です。
しかし私が本当に見たいのは、
5年後。
10年後。
そして15年後です。
20年以上診療を続けていると、
治療した当時には気づかなかったことを、長期経過から教えてもらうことがあります。
その経験があるからこそ、
今の私は「何を入れるか」だけではなく、
「誰に、何を、どのように組み合わせるか」
を考えるようになりました。
補綴は、選ぶものから、調合するものへ。
生活習慣。
歯肉。
形成面。
噛み合わせ。
審美性。
そして長期安定性。
それらを一人ひとり診て、
マージン、形態、材料、咬合を組み合わせる。
「材料を選ぶ」のではなく、その患者さんの将来を考えて「補綴を調合する」。
これが、20年以上の長期経過を診てきた現在の私が考えるセラミック治療です。


